私たちの訪問看護ステーションでは、医療的なケアだけでなく、「聞き書き」というケアにも取り組んでいます。今回はシリーズ6回目。訪問スタッフ=「ケアライター」によるNさまご家族への聞き書きをご紹介します。※写真はイメージです
『そんなに頑張ってないですよ。』
語り手:利用者Nさまご家族(息子様)
聞き手:有松店看護師
最近元気になってきて、
あれはやったか、これはどうだってしょっちゅう言うんですよ。
「ご飯の用意しなきゃいかんけど動けん」とかってね。
そうなんですよ、いつまで経っても母親なんです。
それで私は子ども、なんですよね。ははっ。
ああ、そうですか。
やり方をお母さんに聞いてみるっての、いいですね。
なるほどそりゃ考えなかった。
ご飯の炊き方とか、
これどうしたらいいんだとか。
そうですよね、子どもに教えたって気持ちになれたら、
実際に飯作れなくても満足感が出るかもしれんですね。
いいね、それ。
え?頑張れる理由、ですか。
いやぁ、そんなに頑張ってないですよ。
いやね、昔っから自分が母親の面倒を見るんだろうなーって思ってましたからね。
だから、いざ脳梗塞やって動けなくなっても、
やらなきゃくそー!みたいな気持ちはなくって。
あ、でも1つきっかけはありましたね。
これこれ。聞きます?
樋口了一ってアーティストのね。たしか…そうそう、
『手紙、親愛なる子どもたちへ』って曲。
脳梗塞やるずっと前にふとした事からYouTubeで見つけましてね。
これを聞いて、なんかすんなり納得したんですよ。
私が生まれた時から母親がやってくれたことをね、
そのまま返そうって。慈しもうって。
そう思えたんですよ。ははっ。
いい歌でしょう?
鼻水でちゃいました?ははっ。
ティッシュ、よかったらどうぞ。
私もほら、涙出ちゃう。
ちーん!!
(了)
※「聞き書き」とは、語り手の話した言葉をそのまま書き止め、語り手が目の前で話しているかのような文章としてまとめる手法です。みんなのかかりつけ訪問看護ステーションにとっての「聞き書き」は、ご利用者さまやご家族といった「語り手」の気持ちを聞き、言葉という文章に代えて手紙に綴るというもので、「ケア」の一環でもあります。
この「聞き書き」というケアは、ときには語り手が胸の内に秘めた想いをすくい取ることだったりします。それは意思決定支援の場面や、グリーフケアで活躍します。社内では、そんな取り組みをしているスタッフを「Care Writer(ケアライター)」と呼んでいます。
※掲載については、ご本人またはご家族の承諾を得たうえでご紹介しています
※聞き書きの内容は、個人が特定されないようアレンジしていることがあります